あと一歩届かなかった頂点

2014年1月13日、国立最蹴章と題した第92回全国高校サッカー選手権大会が幕を閉じた。
決勝は、石川県代表星稜高校と富山県代表富山第一高校。
星稜高校は15年連続24回目の出場、一方富山第一高校も2年連続25回目の出場と両校とも全国大会常連校ではあるが、この北陸勢同士、しかも隣県対決を大会前に予想した人はまずいなかっただろう。
決勝のカードが決まった時、星稜の河崎監督は「最後の国立が地味なカードですいません」と冗談気味に謙遜したが、実際の決勝戦は歴史に残る壮絶な試合となった。



実はこの試合、PKが明暗を分けるのではないかと試合開始早々に感じていた。
それは審判のファールの取り方にある。
以前、審判の方にインタビューした際、試合開始直後にその審判なりのファールの基準を示すということを聞いた。
今回の決勝戦では、あまりハードではないチャージもファールをとっていたので、PKも十分ありうると予想したのだ。
これはその審判のクセなのか、高校生の大会だから怪我を未然に防ぐためなのかわからないが、試合開始直後のファールのとり方がそれを示していたように思う。

案の定(もちろん偶然だが(笑))、先制点はPKによるものだった。
これにより、星稜が1点をリードして前半を終えることになるのだが、この前半はどちらかというと勢いは富山第一にあった。
しかし、きっちりとゾーンを作り、冷静に攻撃の芽を摘んでいった星稜のディフェンスを見ると、勝機は星稜にあるように感じた。これは贔屓目ではなく素直な感想だ。



後半は、星稜の攻撃もかみ合い出し、富山第一ゴールに迫るシーンも増えてきた。
これは、前半サイド攻撃に手を焼いていた星稜ディフェンスが徐々に相手ペースをつかんだということもあるかも知れない。
そして星稜に待望の追加点。
高校のブラスバンドを中心とした星稜応援団からは大歓声が上がる。
ここだけの話、私も自然と目が潤んでいた。
しかし一方で、いやな感じもした。
サッカーで2点差は、決してセーフティーリードではない。
むしろこの2点を守りにいくか、3点目をとりにいくかをはっきりさせないと、中途半端なプレーになりがちだ。
実際、2点差から逆転した(された)試合を数多く見てきたし、この試合がそうならないとも限らない。

まさかこの2点のリードで星稜に油断はなかったと思いたいが、あきらめずにゴールに向かう富山第一の攻撃に攻め込まれるシーンが多くなってくる。
そして後半42分。サイドを突破され1点差になってしまったのである。
ただこの時点ではまだ1点リードの星稜。このままいけば勝利することができる……はずであった。
ところが、この1点が富山第一の応援団だけでなく、一般の観客も富山第一の同点を期待することになり、まるで国立競技場全体が富山第一の後押しをしているような空気が包んでいた。これは、星稜の選手たちもきっと感じていただろう。
そして運命のアディショナルタイム。
富山第一が得たPKをきっちりと決めた瞬間、国立競技場が揺れた。



試合は、その後延長後半追加点をあげた富山第一が勝利し、4166校の頂点に立った。
星稜はひとつの目標であった「本田超え」は達成したものの、頂点にはあと一歩届かなかった。
2点をリードしながら逃した勝利は悔しいの一言に尽きるが、これがサッカーの面白さであり、残酷さなのだ。

なお、現在の国立競技場での決勝は、改築工事のため今回が最後。次回は埼玉スタジアムで決勝が行われる。